よくある質問(others)

『歌って覚える英語完全制覇』シリーズによく寄せられる質問


「なぜCDの英語部を歌うのがネイティブじゃないのか?」

泉忠司


たしかに、英語の教材の付属CDと言えば、ネイティブが吹き込むものという 大前提がありますし、この点に関しては『歌って覚える英文法完全制覇』では いっさい、『歌って覚える英単語完全制覇』でも「あとがき」で少ししか 言及していないので、疑問に思われた方がいらっしゃっても仕方ありません。

「なぜネイティブじゃないのか?」の質問に答える前に音楽そのものの話から。 例えばサザンオールスターズの『いとしのエリー』と、その英語版でレイ・チャールズが 歌った『エリー・マイ・ラブ』、両者のメロディーは似て非なるものです。 日本語のアクセントと英語のアクセントが違うのだから、これは当然。そして、 作曲をネイティブに依頼するか、日本人に依頼するかで、僕は日本人を選択しました。 つまり、『エリー・マイ・ラブ』ではなく『いとしのエリー』を選択したのです。 理由は簡単。その方が日本人の耳にメロディーが残りやすいからです。

『歌って覚える英文法完全制覇』の最優先意図は、英文法を例文で理解し、 暗記してもらうこと。もっと具体的に言うと、試験で( )で抜かれた部分に 正しい解答を書けるようになること、きちんとした文法知識を身につけて もらうことです。また、『歌って覚える英単語完全制覇』で最優先の意図は、 リズムのついた英文を暗記することによって、最重要英単語の「意味」と 「使い方」を長期記憶として定着させることです。ともに、きれいな英語の リズムを身につけることは考慮していません。

「きれいな英語のリズムを身につけること」と「英文の暗記」が同時に実現できるなら、 「エリー・マイ・ラブ」を選びますが、多数の大学生の協力のもとで取らせてもらった データによると、洋楽リズムと邦楽リズムでは、同じように全英語詞の曲でも、歌詞が 記憶に定着する割合に圧倒的な差があるのが明らかなのです。具体的に言うと、 マライア・キャリーのメロディーでマライアの全英語詞は覚えられなくても、B’zの メロディーでB’zの全英語詞なら覚えられる学生がすごく多い。ましてや歌詞の半分が 日本語になると、さらに歌詞定着率が増すことから、教育効果を考えると、どう考えても 日本語メロディー、つまり、J-POPがいいのです。洋楽の好きな学生も確かに多いですが、 J-POPと比べるとやはり普及率が低いんですよね。

それゆえ、作曲家の児島啓介、江藤雅樹には日本語部分を中心にメロディーを組み立ててもらい、 歌詞の英語の自然な発音からすると、違和感を覚える英語部分のメロディーがあっても、 一切口出しせず、とにかくメロディーのキャッチーさを重視して曲を作ってもらいました。

そして、「なぜネイティブに歌わせないのか?」ということですが、これも大学生たちに 取らせてもらったデータを反映させています。学生にいろんなタイプの洋楽を聴いてもらい、 「繰り返し聴くことで、英語の歌詞を覚えられるものがあったかどうか?」という質問に対し、 「イエス」と答えた学生の割合は10%にも満たない。そう、ネイティブの発音は流暢過ぎて、 学生の耳になかなか入らないのです。そもそも英語が苦手な場合、これはもう絶望的ですね。 英文法、英語構文、英単語・熟語絡みの「歌による例文暗記」には、絶対に日本人が発音する 英語の方がいいとの結論を導き出すのに、まったく時間がかかりませんでした。だからこそ、 ネイティブではなく、日本人が歌っているのです。『歌って覚える英会話完全制覇』を作るなら、 当然、発音が大事なのでネイティブに歌ってもらうでしょう。

さらに、シンガーであるThe Rootersのメンバーには、かつぜつよく、ひとつひとつの音が はっきりと聞こえるように歌うことを徹底してもらいました。流暢に発音すると聞こえない はずの「s」の音もきちんと出す、I hadは「アイド」ではなく、「アイ・ハッド」ときちんと hの音を出すなどです。極端に言うと、「流暢な英語で歌うな」との指示を出しています。

『歌って覚える』シリーズの目的は、あくまで、きれいな会話、きれいな発音ではなく、 「大学入試で点を採ること」であり、「英文法を完璧にすること」であり、 「英単語を例文暗記すること」です。その目的を達成するために、これ以上のCDは ありえないと自信を持ってお送りしています。

「単語の意味」「単語の使い方」と同じく、「単語の発音」ももちろん重要ですが、 これは「ある程度まで」分かっていれば大丈夫。dangerousを「ダンゲローズ」ではなく 「デンジャラス」と発音できれば、細かいaの発音の差や、lとrの違いなどはいったん無視。 当面の大学入試をクリアしてから、必要があれば修正する方向でいいでしょう。

『歌って覚える英文法完全制覇』の作成時には「lの音をrに変えていい」という 指示さえ出しました。例えばYou’ll succeed.の’llの部分。普通に発音すると当然lの音が 出るので問題ありません。しかし、メロディに合わせて歌うと、lの音だとほとんど 聞こえなくなって「ユゥ・サクシード」と聞こえてしまう。これじゃ駄目なのです。 例えば、時制で現在形を使うか未来系を使うかが問題となるような場合、本当は未来形が 正解なのに、「ユゥ・サクシード」と耳で覚えてると、現在形を入れる危険性がある。 発音のキレイさを追及したり、英会話学習用の参考書なら、当然lの音にこだわりますし、 そもそもネイティブに歌ってもらうでしょう。しかし『英文法完全制覇』では、lの発音を 正確にすることで問題に間違える可能性が増すなら、lをrの音で発音しても 「ユゥル・サクシード」と聞こえて、きちんと未来形にしてもらえる方が いいに決まってる。だから、そういうディレクションを行っています。

目的を明確に、限られた時間をいかに効果的に用いるかが重要です。そりゃあ「意味」や 「用法」を覚えるだけじゃなく、同時にキレイな発音が身につき、聞き取りもできるように なって流暢に話せるようになり、長文も読めるようになって、文法も整理できて、 ライティングも完璧になれば最高でしょうが、それを一度にやるのは無理に決まってます。 すべてを実現させることを目指して作った参考書は史上最悪の参考書でしょうね。

野球をやるとします。素振りしてバッティングのフォームをチェックするときに、 盗塁のタイミングのこと考えながらやって、うまくなると思います?ノックを受けて ゴロをうまくさばく練習をするときに、ピッチングフォームのことを考えてる プロ野球選手がいると思います?自分がいま何をしようとしているのか、つまり 「目的」を常に明確にしたうえで学習を進めていきましょうね。

ちなみに、ある大学(偏差値50くらい)の1年生にお願いして、CDの効果を試すような 調査を実施。クラス全員にある章の原稿と当該部分のCDを渡し、1週間後に試験を 行いました。問題は日本語部分だけを書いてあり、全部英訳しろというもの。 簡単に言うと、歌詞の英語部分をどのくらい覚えられるかというものです。 結果は想像以上のものでした。全体の7割が満点。全部覚えているのです。 2割が60点以上の出来。残り1割は勉強しなかったようで、まったくできて いませんでした。これほどまでの「暗記率」を実現させるCDを付属できることは 本当に嬉しい限りです。そして、これほどの暗記率を実現できるのは、 日本語リズムなJ-POPのメロディーで、日本人が英語を「流暢じゃなく」歌うから こそなんですよね。

「なぜネイティブじゃないの?」という質問のほとんど全てが、大人の方、 それも英語が得意と思われる読者の皆様から寄せられています。英語が得意で あればあるほど、たしかにネイティブの録音じゃないことや、リズムや発音を 狂わせている点が気になるでしょうし、逆の立場なら僕も同じように考えた 可能性さえありますが、最優先目的断行のため、やはり『英単語完全制覇』でも 前作と同じスタイルを貫かせていただきました。

それから、日本語と英語を左右に振り分けるという、学習効果を狙った細工により、 英語部も日本語部もステレオではなく、それぞれがモノラルの録音状態になっています。 また、声を聞き取りやすいように、リバーブをできる限り使わないようにしたうえ、 声に音楽をかぶせたり、装飾したりしないようなアレンジにしています。それゆえ、 皆さんが普段聴いてる音楽CDと比べると、ボーカルの立体感に欠けるように感じるかも しれませんが、そのあたりもご容赦ください。(左右に振り分けた音をセンターに持ってきて、 普通の音楽CDとしてCDのみで発売する計画も進行中です。ご期待ください!)

というわけで、長々と書きましたが、『歌って覚える』シリーズの付属CDは「教育的配慮」を 損なわないようにしつつ、音楽としても十分に楽しめるという観点からすると、 最高のバランスでこの上ないクオリティを実現したCDに仕上がっていると自信を 持って断言します。